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自然エネルギー通信

2019.11.29 
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ソフトバンク秋田琴丘ウインドファーム運転開始見学会&建設レポート

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SBエナジーは9月1日、秋田県山本郡三種町で大規模風力発電所「秋田琴丘ウインドファーム」の運転を開始しました。

「ソフトバンク秋田琴丘ウインドファーム」は、約2,500kWの風車を3基設置し、約7,500kW(7.5MW)の出力規模を有し、一般家庭約4,800世帯分の電力を風の力で生み出す発電所です。SBエナジーとして、大規模風力発電所の運転開始は2016年に運転を開始した島根県浜田市の「ウインドファーム浜田」に続き2件目ですが、「ソフトバンク秋田琴丘ウインドファーム」はSBエナジーが自ら開発を手掛けて運転に至った初めての風力発電所です。

発電所の竣工と運転開始を記念して、9月4日、田川 政幸 三種町長および発電所の建設に携わった関係者が参加した竣工神事が地元の鹿渡神社で執り行われたのち、地元の皆さまを含む総勢約70名が参加した発電所見学会が実施されました。

191128_1.jpg風車のふもとでの見学会の様子。人と比較するといかに風車が巨大であるか明白です

見学会では、参加者はマイクロバスで風車のふもとを訪れ、風車の仕様や建設工程の説明を聞きました。地元住民や関係者の方々は、間近で大きな風車を見上げ、「山の中にこんなにも大きな風車が建つのだな」と感心したり、風車の基礎部分に使用したコンクリートの量を質問したり、思い思いに新たな風力発電所に触れていました。

中でも風車に雷が落ちた場合の仕組みについて、ブレードに落ちた雷の電流はタワー内部を伝って地中に流しており、「ロゴスキーコイル」という雷電流計測装置で遠隔監視しているという解説には多くの方が熱心に耳を傾けていました。

風車の主要パーツをご紹介
風車を構成する主なパーツは以下の通りです。

■ブレード
風を受けて回転する、風車の羽の部分です。「ソフトバンク秋田琴丘ウインドファーム」で使用した風車のブレードは全長約50mにもおよびます。また、ブレードは風を受けて回転しやすいよう、よく見ると先端へ向けて緩やかに捻りが加えられた形状となっています。

■ハブ
ブレードを支える軸の部分です。ハブからは後方にあるナセル内部まで「動力伝達軸」と呼ばれる軸が伸びており、ブレードの回転を生む風の力を伝えます。

■ナセル
タワーの上部に位置する筐体(きょうたい)部分のことを指します。内部ではハブから伸びる「動力伝達軸」から、「倍速機」「ブレーキ装置」を通じ、実際に電力を起こす「発電機」が格納されており、ここで風の力が交流の電力に生まれ変わります。また、内部は風車の点検を行うスペースが設けられており、作業のため、人が登ることができるようになっています。

■タワー
風車を支える柱を「タワー」と呼びます。全長50mもあるブレードを支え、風を受けて回転できるようにするため、「ソフトバンク秋田琴丘ウインドファーム」のタワーの高さは約85mにもおよびます。また、ナセル内で発電された電力を地上へ伝える電力ケーブルが通っていて、地上付近にあるトランス(変圧器)で高圧の交流電力に調整されたのち、近くの送電線へと電力が送られます。また、ナセルでの点検作業のため、内部にははしごやエレベーターが設置されています。

191128_2.jpg.png
風力発電のしくみについては、図解でみるエネルギーのしくでも紹介していますので、あわせてご覧ください。
さて、ここからは2019年6月の深夜に行われた風車のブレード輸送と組み立て作業の様子を紹介します。

真夜中の輸送作業
この日の作業は風車1基に3本取り付けるブレードの、最後の1本を設置する作業です。港へ運び込まれたブレードが風車に設置されるまでの工程を追っていきます。

午前0時
海路で秋田県の能代(のしろ)港に運ばれてきたブレードを、クレーンで吊り上げてトレーラーに積み替え、出発の準備が整いました。最初に目指すのは、次の積み替えを行う中継地点です。

ブレードは荷台がのび縮みする特殊なトレーラーで、交通量が少ない夜中の時間帯に輸送します。トレーラーの前後を誘導車ではさみ、他の通行車両に迷惑をかけないよう細心の注意を払いながら目的地へ向けて進みます。

ブレードの全長は約50mもあるため、交差点を曲がるのも一苦労です。周囲の駐車場も利用しながら、ゆっくりとハンドルを切ります。ドライバーの運転技術が光ります。

トレーラーは能代港から約25kmの道のりを平均時速約10km、ゆっくりと自転車で進むのと同じくらいのペースでおよそ2時間半かけ、夜が明けて空が明るくなってきたころ、ようやく無事に中継地点へ到着しました。


191128_3.jpg能代港入り口交差点を右折する輸送車両

191128_4.jpg交差点では近くの商店の駐車場を借りて、何度も切り返しを行いながら少しずつ方向を変えて曲がります


最高時速4km!?日本中からオファーが絶えない、レアな働く車「ドーリー」

午前4時30分
中継地点では、山頂にある発電所の建設地までの山道を進むため、ブレードを「ドーリー」という車に積み替えます。



191128_5.jpgブレードを山道で輸送する特殊車両「ドーリー」


ドーリーはブレードをななめに立てた状態で山道を登ることができる特殊車両です。トレーラーの荷台から、ゆっくりとバランスを取ってクレーンでブレードを持ち上げ、ドーリーの荷台にそっと下ろします。ドーリーには、ハブと接続するためにブレードの根本にあるたくさんのボルトで固定する専用アタッチメントがあり、作業員がナットをひとつひとつ手作業でしめて、ドーリーにしっかり接続させます。


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ブレードとドーリーをしっかりと接合するため、アタッチメントのナットを手作業で1本1本締めていきます

ドーリーの荷台部分に固定されたブレードを、山道の斜面や道幅に合わせ、約40°の角度に調整し、木々が生いしげる細く曲がりくねった山道をゆっくりと目的地へ進みます。このときの進行速度は時速約4km、徒歩と同じくらいのゆったりしたスピードで、根気よく目的地を目指します。

191128_7.jpg輸送時のブレードの角度を調整し、いざ山道を目指します

191128_8.jpg車両とほぼ同じ幅の山道を、周囲の木々に気をつけながらゆっくり登ります

ドーリーは約3kmの山道をおよそ1時間かけて登り、建設地までブレードを運びました。

191128_9.jpgドーリーからブレードをクレーンで降ろし、風車のふもとに移動させます

風との戦い、山頂での組み立て作業

午前11時
建設地に到着したブレードを風車本体に取り付ける作業が開始しました。

長く大きなブレードが風にあおられないよう、風の弱いタイミングを見計らい、クレーンで持ち上げたブレードをハブにはめ込んでいく作業です。

この工法は「シングルブレードインスタレーション」と言い、専用の天びん吊具が付いたクレーンを使ってブレードを1本ずつハブに取り付けます。一般的には風車のローター(ハブとブレード3本)を地上で組み上げ、その一式をクレーンで吊ってナセルに接合する工法が多く用いられますが、今回は作業スペースが最小限にできるこの工法が採用されました。


191128_10.jpg風車の頂上にあるナセルの最後尾上部の黒い点に見えるのが、ブレードを接続する位置の指示を出す作業担当者。
地上85mの高所でミリ単位の調整を行います

風車の組み立て、パーツや機器の点検の確認を行う技術アドバイザーの監督の下、接続作業に適したバランスで重心がつり合うポイントを、専用クレーンの微妙な操作で何度も探りながら決めていきます。風が強まったらブレードを一度低い位置に戻し、風が弱まるのを待ちます。

191128_11.jpg専用の天びん吊具の付いたクレーンでブレードを持ち上げるポイントを調整する

上げ下げを繰り返しながらブレードをタワーの高さ約85mまで持ち上げ、取り付け先のハブに近づけていきます。ブレードとハブの接合を担当する作業員はタワー内部に設置された点検用のはしごを登り、ナセルの上から顔を出し、クレーンの操縦者に無線機を使ってブレードの高さや角度など位置調整の指示をミリ単位で伝えます。

午後2時
能代港出発から約14時間、取り付け作業開始から約3時間をかけ、ついにブレードの取り付け作業が完了しました。


191128_12.jpgブレードが3本取り付けられ、外観が完成した風車

外観完成後、ナセル内で発電した電気を地上に送るためにタワー内部での配線工事を行うほか、周辺の敷地ではメンテナンス作業車両が往来しやすいよう、小石を敷いたり水はけを良くするために土側溝(どそっこう)という雨水を流す水路を設ける工事を行います。その後、試験運転を経て運転開始の日を迎えました。

山の上での巨大な風力発電機の建設は、輸送から組み立てまで、さまざまな特殊車両や重機を操る職人たちの技術によって、作られていたのですね。

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