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2021.09.17 
10周年特集

「これまで築いてきたことを効率的に活用し、新しい電源・ビジネスモデルに生かす」-奥 朝子 CBO 兼 電力事業本部長インタビュー

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2021年10月6日で設立10周年を迎えるにあたり、SBエナジーの10年間を振り返っての思いや今後の展望について経営陣が語ったインタビューシリーズを、今回から全3回に渡ってお届けします。第1回目は、SBエナジー株式会社 CBO※ 兼 電力事業本部の奥 朝子本部長です。
※ Chief Business Officerの略

1. 奥本部長_cropped_ND6_4338.JPG
Q: 奥さんは現在、CBO 兼 電力事業本部長として、SBエナジーのBMW戦略にどのように関わっておられるのでしょうか。
CBOとしては、基本的に経営会議のメンバーとしての役割であり、事前に他部門から案件に対してアドバイスを求められたり、経営会議において審議メンバーの一人として全案件を精査する立場です。
日々は、電力事業本部の責任者として、主に「Watts事業」の運営・開発に携わっております。Watts事業をどれくらい拡大していくかというところに主眼を置きながらも、事業展開の際に「Bits」と「Mobility」事業はどのように関われるかという点を常に意識しています。

Q: SBエナジーが創業以来取り組んできた自然エネルギー発電事業であるWatts事業は、BMW戦略全体の起点となる川上資産としてますます重要性が高まっています。Watts事業に対する思いをお聞かせください。
この10年は、固定価格買取制度(FIT)を軸に事業展開をさせていただいたという認識です。FIT制度が今終わりを迎えつつある中で、これからはまた違うものをいかに生んで拡大していくかがWatts事業において大事なポイントです。
また、Watts事業のバリューチェーンという観点では、既存の川上資産を軸に、川中と川下にもBitsとMobilityを活用して展開していくという流れが、この一年で強くなってきています。その意味では、軸になるWattsがないとBitsとMobilityとともに、川中・川下に展開していけないという危機感を私自身は大変感じているところです。

Q: これまでWattsが起点になってきたわけですが、WattsのどういうところをBitsとMobilityに生かしていくのが重要になるのでしょうか?
例えばBitsのカテゴリーで、実用性が高く高精度のリアルタイム天気予報が得られる、世界有数の気象情報プラットフォームを開発提供するTomorrow.io(旧 ClimaCell Inc.)のような新しいテクノロジーに対して戦略的投資を行っていますけれど、まさにこのテクノロジーを生かすためには、SBエナジーがこれまでWattsで積み上げてきたデータを活用することもキーになってくるのかなと思います。そのデータって簡単には活用できなくて、きちんと意味をもって整理されていなければ、うまく活用してもらうこともできないので、意識的に整理をしていくということが必要だと思っています。また、Mobilityに展開していくには、そのまま発電事業をしていたらMobilityの事業が何か急に湧いてくるわけではなくて、自然エネルギーで作った電気を、ビークルであるMobility領域の方にどのようにつなげていくかという新しいモデルを作らなければいけないので、そこは私たちだけではなく、戦略事業本部や出資先とも連携して考えているところです。


2. 奥本部長_2_ND6_4433.jpg1.jpg
Q: 国内における太陽光、陸上・洋上風力などの再エネ開発環境は、適地の減少や、FIT制度からFIP(フィードインプレミアム)制度への移行などもあり、少なくとも10年前とは同じように進まない状況にあるかと思います。このような事業環境の変化を踏まえ、SBエナジーがWatts事業でやるべきことは何でしょうか。
下支えとなっていた価格形態が違うということは大きいですが、逆にそれ以外でやらなければいけないことは、同じ再生可能エネルギーの事業開発、しかも自然エネルギーを使ってということでは、根本的にはあまり変わらないと思っています。
例えば自治体の方にまずは事業を理解いただいて許認可を取得していくとか、あとは土地の確保をしていくとか、技術的な確約をとっていくといった軸となるアプローチは、これまでのFITの太陽光のビジネスであろうが、FIPであろうが、コーポレートPPAであろうが、他の電源であろうが変わらないことだと思っています。むしろここまで培ってきた経験を生かしながら、新しいこととのギャップをいかに埋めていくか。私もチームメンバーも今、そこに気持ちもエネルギーも使っているところです。

Q: Exeger社との戦略的パートナーシップについてお聞きします。SBエナジーはソフトバンクグループ株式会社(SBG)が出資したExegerと戦略的パートナーシップを結んで、Exegerが発明・設計・製造を手がける画期的な太陽電池技術「Powerfoyle」の日本を含むグローバル進出のサポートをしています。
Powerfoyleは多様な形状や質感にプリントすることができ、組み込んだデバイスに恒久的な電力供給を可能としますが、どのようなデバイス・製品と相性が良いのでしょうか?

SBGのExegerへの初回出資が2019年の3月で、私が入社したのが2019年の5月でした。当時の役職はExegerとのパートナーシップを推進するグループのマネージャーだったんですね。実は私にとっては、SBエナジーに入る一つのきっかけとなったのが、Exegerとの戦略的パートナーシップに関するプレスリリースを見たことと、Exegerが持つPowerfoyleというテクノロジーでした。
Powerfoyleの特長として、「薄くて、軽くて、フレキシブル」。
例えば室内の電気でも発電するというものですから、簡単に想像すると、屋根などにおいてある太陽光パネルと比べて、明らかに発電できる力は小さいですよね。受ける太陽光の量が全然違いますから。そういう意味では、すごく多くの電気を出力するわけではないです。
ただ、「薄くて、軽くて、フレキシブル」という特性があるので、持ち歩いたり、室内と屋外を出入りしたりするような時や、コードがあると邪魔な環境などでうまく活用できるのではないかと思っています。

3. Powerfolyle_pic01.jpg多様な形状や質感にプリントすることができ、デザイン性の高いPowerfolyleを製造するExegerは、欧州特許庁が2006年に創設した技術・社会・経済的に優れた発明を表彰する、欧州で最も権威のある賞であるEuropean Inventor Award 2021(欧州発明家賞、中小企業部門)を受賞しました。

Q: これまで太陽光発電所や風力発電所の開発と運転が主なビジネスだったSBエナジーにとって、Exeger事業は初めてのコンシューマー事業です。これまでの方向性とは違う新たな試みを推進するうえで、従来の事業を推進するのと大きく違う点は何でしたか。
去年の4月くらいから、コンシューマー業界での経験がある方も採用を始めたのですが、これまでSBエナジーが行ってきた事業開発の経験や立ち回りに対し、コンシューマー向けの営業やマーケティングは大きく異なるので、まずは、製品の特性をお客さまアピールしていく、宣伝していくというそもそものマインドセットが全然違うんですね。物を売る経験がなかったので、なかなかそのような発想をもつのが難しかったです。
法人営業は製品をより素敵に、特性をポジティブにアピールしていくことが大事なので、それになかなか慣れませんでした。

Q: Exeger事業を展開していくにあたり、工夫していることや、苦労があればお聞かせください。
そもそもFITの太陽光ビジネスというのは、お客さまを自分で見つけに行く必要がなかったわけです。Exegerのセールスマーケティングというのは、ゼロベースで何のコネクションもないところから、Powerfoyleを使ってくれそうなお客さまを自ら探しに行くといったところで、本当に手当たり次第に電話をしたりしていた時期もありました。セールスマーケティングのやり方を築くといったところがまず一つ大きなステップだったかなと思います。
Exegerとほぼ同時期に戦略的パートナーシップを結んだTomorrow.ioや、電気を需要家となる企業へ直接売電するコーポレートPPAでも、自分たちでお客さまを探していかなければならない状況にありました。この3分野が、同じようにセールスマーケティングを行うということで、マーケティング定例ミーティングを立ち上げました。お客さま情報の共有などを始めた頃から比べると、今はだいぶ、セールスマーケティングの基本アプローチの仕方が確立されてきたかと思います。そこまではなかなか難しかったですね。
皆でロールプレイをして、お客さまの役や説明者の役をやって、「うーん、それだと製品の良さや特性が伝わらないね!」とか、そのようなこともしていました。
このような努力がさらに実を結ぶように、引き続き提携先と協力しながら、この3分野の事業を推進していきたいと思います。

Q: 自然エネルギーの事業会社や電力会社として、発電所の開発管理に目が向きがちですが、FIT制度では20年間の事業期間をともに過ごす上で、表には見えにくい部分ですが発電所立地地域との関係構築も非常に重要な仕事です。自治体や周辺住民の方々との関係性において、特に心に残るエピソードはありますか。
私は本部長になってからは1年半で、そのうちほとんどが新型コロナウイルス感染症の影響で、現地に行く機会が以前と比べて激減しています。その意味でも、なかなか特定の案件をお示しするのは難しいですが、例えばある案件で、我々がお話を持っていった際、町にはその電源事業に関して何の知識もご経験もお持ちでなかったものの、「このような事業をしたい」という説明をしたところ、町長さんが「この事業はきっと自分達にも、地域にも役に立つんだ」と理解してくださり、事業が推進しやすいような働きかけをしてくださったり、もちろん地域貢献推進部のメンバーの力ですけれど、そうやって動いて下さった方々もいらっしゃいますし、他の地域でも、条例を制定してくださったりしました。
あとは我々の中で大事なのが、地元住民の方への説明会がポイント、ポイントであるのですが、そのような所にも、例えば町長さん・副町長さんなどの行政の方々が参加してくださり、自治体を挙げてのサポート姿勢をアピールしてくださるなど、地元の方々から多くのサポートをいただくプロジェクトもあります。とても有難く思っています。

Q: 立地予定地域において発電案件をすすめる際、どのような工夫や苦労がありますか?
もちろん中には、何度お伺いしてもお会いいただけないプロジェクトもあり、それは地域地域で、そのようなこともあります。なかなかご理解をいただけない時は、私自身も一緒に現地へ赴き、何時間もお話を聞きながら、案件やSBエナジーのこと自体を理解していただき、信頼していただいた上で必要な書類を提出いただくとかですね。プロジェクト全体からすると、一つの小さな書類かもしれないのですが、それがなければ先に進めないという時は、プロジェクトどころか電力事業本部全員で取り組みます。案件を推進するための各種困難を乗り越えるには、全員野球が必要ですよ、とよく本部員には言っているんです。
また、SBエナジーの特徴として、発電所が運転開始を迎えたら終わりではなく、その後も地域の皆さまとコミュニケーションをより深く継続するところです。いろいろと地域の皆さまの生活に不都合が生じるようなこともあるかもしれませんし、そうでなくても定期的に地元にお話を伺いに行ったりするようにしています。もちろん何か困ったというご連絡があれば、メンバーが直ぐに現地に出むいてお話を伺い、何かトラブルがあれば至急対応するということも当然しています。長期間、発電所を安定的に運営させていただくためには、そういったきめの細かいお付き合いが必要だと思っています。


4. 奥本部長_3_ND6_4644.JPG
Q: SBエナジーが地域貢献活動で特に注力してきたのが、環境教育プログラム「未来×エネルギー プロジェクト」です。発電所立地区域の小学生向けに、エネルギーや科学に関心をもってもらうきっかけを作る目的で2012年度に始めたこのプロジェクトを行う意義について改めてお聞かせください。

初回は2012年ということで9年前、京都市立明親小学校の5年生に行ったということなので、当時小学生だった子どもたちももう大学生になっているんだなと私も改めて認識しました。
地元の土地をお借りして自然エネルギー事業をさせていただくということで、何かその地元の方に還元できるようなものはないかという発想で始めたのが「未来×エネルギー プロジェクト」です。
普通の授業では学べない、社会問題の一つである環境問題やエネルギーの活用について地元の小学生が勉強する、学校の算数などとは違って正解がないインタラクティブな授業で、「何を言っても〇」ということで、先生や保護者の方々からも、普段発言をしない子どもたちも自由に発言できたり、自分の考えや主張を述べる機会があることに対して、いろいろな意味で有益だと非常に好評いただいていると伺っています。
環境問題やエネルギーについて理解が深い人材を次世代に輩出していけるということは、SBエナジーにとっても意義のあることですので、今後も継続していきたいと思っています。

5. 未来xエネルギーPJ_安平町180830_6.jpg2018年に北海道安平町立早来小学校で実施した「未来×エネルギー プロジェクト」より

Q: 今後のSBエナジーの展望についてどのようにお考えですか。
自然エネルギーですので無限です。今使っているエネルギーをどこまで自然エネルギーに置き換えていけるのか、という意味では終わりのない仕事だと思っています。
これまで10年間、太陽光でやってきたことを、違う電源に置き換えていったり、展開したりしていくということだと思うので、ゴールは見えないのですが、一つ一つ積み重ねていくことで、振り返った時に10年分積み上げていっているような感覚になるのかなと思います。陸上風力、地熱、洋上風力の新しい電源を一つ一つ運転開始に近づけていくことが、今の私たちにとって大事なことだと思っています。また、太陽光も直接需要家の方に電気をお届けするビジネスモデルであるコーポレートPPAをしっかりとビジネスとして軌道に乗せたいですね。コーポレートPPA、地熱、陸上風力、洋上風力という4本柱のポートフォリオをどうあるべきか考えながらやっていくかというのが、次の10年の大きなテーマかと思っています。

Q: 奥さんがSBエナジーに入社されたのは2019年と、現経営陣の中では最も現在のSBエナジーに近い姿を社外からご覧になっていました。当時の奥さんにはどのような会社と映っていましたか?
ソフトバンクグループが自然エネルギーを積極的にやっていると知ったのは、そんなに昔ではなかったのですが、知った時は、「きっと、普通の自然エネルギーの発電事業者とは違うことをやっているのだろうな」というのは直感的に思いました。実際にその時はすでにBMW戦略」というストラテジーを掲げていたので、やっぱり他とは違い、グループのバックグラウンドであるAI・IoTのプラットフォームを活用しながら、自然エネルギーの普及をしているのだろうなという印象をもっていました。
入社してからも、その通りだったと思っています。

Q: 奥さんが考える「ソフトバンクグループらしいエネルギー事業」とは何でしょうか。
SBエナジーという意味では、先ほどの「BMW戦略」が一つ、他の再生可能エネルギー事業者とは違うというのは明確な点かと思います。我々は150人程度の小さな会社ですけれど、ソフトバンクグループ自体は非常に大きな会社で、傘下にはさまざまな事業を手がけている会社があります。ソフトバンクグループ内でも、皆さんといろいろな連携、協業をしていくことが、SBエナジーが作り出す自然エネルギーを我々が想像していない形で活かしていくことが、「ソフトバンクグループらしいエネルギー事業」になると思っています。

Q: 最後に、自然エネルギーの普及促進というテーマに対して、10年を迎えたSBエナジーの今後に向けた意気込みを教えてください。
ここまでの10年、次の10年というと非常に肩に力が入ってしまうのですが、結局先ほど申し上げた通り、日々の積み重ねだと思っていますので、我々が足元で一つ一つ行っていること、それ自体が自然エネルギーの普及に寄与している、直接的に関係していることは社員全員が実感し、誇りにも思っているのではないでしょうか。
私自身もSBエナジーの一社員として、太陽光の事業でここまで築いてきたことを効率的に活用し、新しい電源や新しいビジネスモデルに活かしていくことで、日本やグローバルの脱炭素に貢献していきたいと思います!

6. 奥本部長_4_ND6_4395.JPG
次回のインタビューは、ソフトバンクグループがエネルギー事業を立ち上げた当時から自然エネルギー事業支え、現在はSBエナジーの戦略の要である、 SBエナジー CSO / 戦略事業本部の守屋 伸祐本部長です。どうぞお楽しみに!


ソフトバンクグループのエネルギー事業の歴史:
・2011年〜2016年を振り返った前編はこちら
・2017年以降を振り返った後編はこちら

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